富山大学COC+関連地域志向科目講義レポート

授業科目名:富山学

富山の自然基盤(地形) 「立山現地見学 弥陀ヶ原〜立山カルデラ〜立山カルデラ博物館」

開講学期曜限:2016年度後期・木曜5限 10月15日(土)9:00〜16:30 第2回〜第5回(4時間分)
現地講師:環境省立山自然保護官事務所 自然保護官 柴原崇氏 自然保護官補佐 吉井良治氏・山本美智子氏
富山の自然基盤(地形)
「立山現地見学 弥陀ヶ原〜立山カルデラ〜立山カルデラ博物館」

富山の自然基盤を大きく規定している立山連峰の自然環境についての理解を深め,立山カルデラを素材に富山の自然災害と防災への取組について現地で学んだ。学生たちは本学五福キャンパスからバスで立山弥陀ヶ原まで移動。現地講師の柴原自然保護官から,中部山岳国立公園立山・弥陀ヶ原地域の概要について説明を受けた。

国立公園や自然公園法の目的,環境省の自然保護官の役割について紹介し,中部山岳国立公園の歴史や自然状況,立山開山から電源開発,立山黒部アルペンルート開通までの状況や近年では年間100万人の観光客や登山客が訪れていることについて,弥陀ヶ原の自然環境について標高2000mの溶岩台地で年間降水量5000〜6000mm,平均積雪量5m,11月中旬〜6月下旬の200日間は雪があり,これら豊富な水と冷涼な気候による湿地が形成され『ガキの田』と呼ばれる地塘(ちとう)が約1000個を含む600haの草原であり,立山弥陀ヶ原・大日平は日本で最も高所にあるラムサール条約湿地として2012年登録され湿地の「保全・再生」「賢明な利用」「交流学習」の促進を考えていかなければならない旨の説明を受けた。

立山黒部アルペンルートの建設開通に伴い,1950年代から1970年代にかけ無秩序に車輌や人が湿地を荒らしていたと当時の写真を掲げ,その後の車輌規制や湿地内の遊歩道設置と緑化再生について説明を受け,学生たちは2つの班に分かれ現地を見ながら,弥陀ヶ原の緑化再生と復元された様子を視察。壊された自然の復元の困難さ,植樹の課題や帰化植物の問題,外来種駆除についてなど弊害を最小限にしてどう恩恵を受けるかなど,学生は弥陀ヶ原の将来像を『保全・再生」「賢明な利用」から考えてみた。

立山カルデラの景観を視察して富山県立山カルデラ砂防博物館へ移動。館内で立山カルデラを紹介した立体映像を視聴。学生たちは立山カルデラ展示室とSABO展示室を各自見学し,立山カルデラの自然と歴史,県土の保全のため行われてきた砂防事業について学んだ。特に立山カルデラの砂防事業のきっかけとなった,安政5年(1858)の飛越地震で鳶山が大崩壊し,崩れた土砂が天然ダムを作り,決壊して土石流となり下流の富山平野へ流れ出て大きな被害を与えた「安政の大災害」や明治39年(1906)から着手した立山カルデラの砂防工事の今日までの紆余曲折など自然災害と防災について詳しく学んだ。

立山現地視察を終えた学生は,視察で学んだことを基に「立山連峰の自然が富山県にとってどのような意味を持っているのか」「どのような恵みをもたらし,あるいは,災いをもたらしたか」「富山県に暮らす人々がそれをどのように守り,生かし,あるいは折り合いをつけていったのか」「そのためにはどのような仕事や職種,ライフスタイルが重要だと考えられるのか」の視点からレポート作成し提出した。